日食観測グラス(その2)

日食・月食

安い/広い日食観測グラスについて

前の記事で、日食観測グラスとして、ビクセン、ケンコーの製品をお勧めしていますが、先日「それらの製品は、覗く場所が小さいから見えにくい、もっと面積の広い製品の方がいいと思う」という意見がありました。

こういう製品のことを言っているのだと思います。

覗く場所が小さいから見えにくいのかというと、実際にビクセンの日食観測グラスを使ってみるとわかりますが、顔面に密着して使うものなので、あの程度の面積でも十分な大きさです。

溶接用のメガネだった

こういった覗く場所の面積が広い製品(ビクセンに比べると安価)のことを調べてみると、あるキーワードが添えられています。
「CE」、「DIN規格」、「ヨーロッパ標準規格 EN169」、「遮光度13」など。

これらは、正確には、
欧州連合加盟国の基準:CE
ドイツ工業規格:DIN 4647-1
ヨーロッパ標準規格:EN169
JIS溶接用めがね規格:遮光度13
というものです。

これらの規格は、太陽光を観るためのものではなく、「溶接」のものです。つまり、金属同士を結合するときに溶接をすると、ガスの炎やアーク放電などが非常に強い光になるので、その光を和らげて作業を行えるようにするものです。以下のサイトにあります。

【ドイツ工業規格:DIN 4647-1】
http://www.beuth.de/en/standard/din-4647-1/1856850
Title: Glasses for Eye-protection Equipment; Protective Filters for Use in Welding
タイトル:眼保護機器用ガラス、溶接用保護フィルター

【ヨーロッパ標準規格:EN169】
http://shop.bsigroup.com/en/ProductDetail/?pid=000000000030036269
Title: Personal eye-protection. Filters for welding and related techniques. Transmittance requirements and recommended use
タイトル:人の目を保護します。溶接および関連技術のためのフィルタ。使用において推奨される透過率の要件

つまり、溶接用の保護フィルターを太陽観測用と称しているわけです。

日食はめったに見られない天体現象ですが、溶接は日常的に行われていることです。めったに見られない天体現象の為に製品を開発すれば、値段は当然高くなります。なので値段の安い日食観測グラスは、この種のものだと思っておいた方がいいかと思います。

しかし、溶接の時に発する光と、太陽光は同一ではありません。
太陽光はスペクトルが広いため、可視光だけではなく、赤外線や紫外線、ガンマ線などの電磁波として、眼に見えない光も届いています。

これらの製品を使って、長時間太陽を見た時にどうなるのかの検証記事を探してみましたが、見当たりません。(知っている人がいたら、教えてください)

つまり、これら溶接用規格のものを日食観測グラス使ったときに、きちんと目を保護してくれるかどうかは、良くわからないということです。

値段を取るか、安全性を取るかよく考えて

特に今回は、日食を見ることができる時間が長く、冬の空気のきれいな時間帯になるため、紫外線や赤外線なども強いこと予想され、注意が必要です。

眼は一度痛めると回復が非常に難しいところもあります。特に小さいお子さんの場合、一度痛めてしまうと、それが一生続くこともあります。

値段を取るのか、安全性を取るのかは、よく考えて選択してください。

コメント

  1. Tramper より:

    昨日のニュースで、今朝、日食観察眼鏡についてちょっと調べた者で、こちらのウェブサイトをよく読んでいませんが、溶接用の眼鏡の安全性について検証したウェブサイトがありましたので紹介します。
    天文教育普及研究会の日食の安全な観察推進ワーキンググループのサイトで、どのような団体か良く知らないので信憑性は?なところがありますが、報告書を見るとある程度しっかりと検証しているようなので参考になるかと思います。
    http://tenkyo.net/iya/eclipse/eclipse_index.html
    報告書では、溶接用遮光ガラスの安全性が高いと見受けられ、商品名が明記されているものでは、アーテック社の太陽グラス(DIN規格EN169遮光度番号13番)があります。但し、アーテック社のウェブサイトを見ると連続2~3分まで観察となっています。
    http://tenkyo.net/iya/eclipse/glass1.pdf
    個人的には、DIN規格EN169遮光度番号13番の溶接用遮光ガラスで、かつ日食観察用であればおそらくPL法の対象にもなるので安全度が高いと思い、アーテック社の太陽グラスを使用する予定です。

  2. KenKen より:

    アーテック社のサイト↓
    http://www.artec-kk.co.jp/archives/20341
    を見ると、
    弊社の商品は太陽観察用に開発され、ドイツ工業規格であるDIN EN169遮光度番号13番の基準を工業試験にてクリアーした遮光板を使用しています。
    と書いてますが、何かヘンですよね?
    EN169は溶接の規格だから、
    弊社の製品は、溶接用に開発され
    とは言わないんですねぇ。
    しかも、ドイツの規格のDINとヨーロッパの規格のENがごっちゃになってるし。

  3. EastWest より:

    PL法ってさ、
    消費者庁のページだと、『被害者が,1)製造物に欠陥が存在していたこと,2)損害が発生したこと,3)損害が製造物の欠陥により生じたことの3つの事実を明らかにすることが原則となります。』となってる。
    http://www.consumer.go.jp/kankeihourei/seizoubutsu/pl-j.html
    つまり、被害を受けた側に証明責任があるわけ。もし太陽観測グラスで被害を受けた場合の証明というのは、医学的な証明とともに、日食グラスが直接の原因であることを証明しなくちゃいけないから、すっごく難しいよ!

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