宝禄稲荷の昔話が神社に掲載してあったので、
テキストを起こして、絵を付けておきます。
読みやすいように改行をいれています。
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宝禄稲荷昔話
昔々この地にたいそうくじ運の強い百姓がおったそうじゃ。
じゃがこの男初めからくじ運が強かった訳では無く、いつも富くじではせっかく貯めた小銭をつぎ込んでは、すっからかんになってしまいおっかあに怒られて頭があがらんかったそうじゃ。
そんなある日、よせばよいのにおっかあがせっせと夜なべをして貯めた小銭を見つけ、早速江戸の街に富くじを買いに意気揚々と山を下って行ったそうじゃ。
「こいつを元手に一発当てておっかあやガキ達に腹一杯の飯を食わしてやりたいのう。」じゃが案の定帰りはけつの毛まで抜かれスッテンテンになって山道を重い足取りで帰って来たそうじゃ。
その当時、今の牛込の深い谷を越えて山道を登ってくるとちょうど登り詰めたこのあたりに小さなほこらが有ったそうじゃ。
百姓は、ほこらの前で一休みしながら何と言ってごまかすか思案にくれていたそうじゃ。
財布の中には、外れた富くじが捨てられずに入っていたので、これをおっかあに見つかったら半殺しの目に遭うと思い、ほこらの前に外れくじを置くと自分の運の無さをなげき、いつかおっかあに楽をさせてあげたいと願ったそうじゃ。
それから何か月かして、小銭のできた百姓は、また懲りずに夢をいだいて富くじを買いに山を下りていったそうじゃ。
じゃが、今度は何か違っておった。
百姓は、一番くじを当ておった。
それから何をやってもつきまくり、一家は、たいそう幸せになったそうじゃ。
百姓は、ほこらにお礼を言い、ここに立派な社を建てたのじゃった。
その話を聞きお参りをした人達が、誰言うと無くこの社を宝禄稲荷と呼び、百姓の運が自分にも授かるようにと外れくじを置いて拝んだそうじゃ。
今ではこの宝禄稲荷は、金銀融通、一陽来復で有名な穴八幡宮の末社になり、沢山の方々が運が開けるように外れくじを置いてお参りしていくそうじゃ・・・!
新宿区原町三丁目会
宝禄稲荷神社保存会
文 川西倫尚
絵 夏目亜矢子
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