「日本書紀」や「古事記」は、事実を基に創作された神話になりますが、その中で、三種の神器の一つに数えられる、草薙剣(くさなぎのつるぎ)を得ることになった「ヤマタノオロチ」は出雲の神話における重要な部分になります。
民俗学的な議論で、ヤマタノオロチ(八俣遠呂智/於呂知)が、実在しなかったという説は、昔からありますが、ここでは、祭神として祭られているのかどうかを見てみます。
三種の神器の一つである、草薙剣は熱田神宮に収められているくらいの重要なものですから、それを体内に宿していたヤマタノオロチは、霊力のある動物であったと考えるのは普通のことだと思います。霊力のある動物を信仰するという話は、稲荷のキツネや、犬神信仰などにも見ることができます。
ならばその霊力にあやかろうとして、神社に祭られているのかというと、神社本庁の平成祭データで検索すると、1件(つまり、1社)しかでてきません。
大頭龍神社(だいとうりゅうじんじゃ)
静岡県磐田郡浅羽町梅山128
【祭神】素盞嗚命 於呂知之命
その神社ですら、スサノオ(素盞嗚)がメインの祭神です。
神社本庁系の本社・境内社は全国で、12万4百4社あるのですが、そのなかでたった一社しか存在しないということになります。
民俗学的な研究では、龍神をオロチと結びつけるということもあるので、厳密には1社だけとは言えないのですが、それでもせいぜい10~20数社程度になります。
また、その神話の現地である出雲国の出雲風土記にはヤマタノオロチは出てきません。
こうして考えると、ヤマタノオロチは実在したのではなく、古事記・日本書紀をまとめるときに、創作された神話であると考える方が妥当に思えてきます。
コメント
本日参拝した『津島神社』(愛知県津島市)の境内社に「荒魂社」があったのですが、御祭神がスサノオ神とヤマタノオロチ神でした。
昔は「蛇毒社」と呼ばれていたと書かれていました。御本殿には祭られてなくても境内社には祭られているかもと思いました。(古くはないかもしれません。記紀以後の祭祀かも。)
あるいは、隠神のような扱い・・・、なんて想像してみました。
静岡県に用事があり、大頭龍神社へ参拝してきました。
調べたら、静岡県の菊川市と袋井市に大頭龍神社があることがわかりました。
(このサイトの方が詳しく写真を載せています。http://www.komainu.org/
菊川市加茂 にある大頭龍神社が 元々で
宮司さんの話によると、浜松市や袋井市に分祀した記録はあるが
現在は管理下にないそうです。(磐田郡浅羽町梅山は 現在袋井市梅山)
袋井市の大頭龍神社にも参拝してきましたが、神社名もない小さな社でした。
上記サイトの方が掲載している写真を頼りに参拝しました。
追伸
自宅へ帰って 再度検索したら
静岡県袋井市方丈6-9-31にも
「熊野大頭竜神社」がありました。事前にわかっていれば
序に参拝できたのに残念(呼ばれなかったということですね)
> 河野さん
静岡県は、京都や大阪など遠方に行く時に通過する事が多くて、静岡県内の神社はあまり行ってないです。浜松とか岡崎あたりだと良い神社も多そうです。
大頭龍神社をキーワードに神社本庁のデータベース(住所は平成の大合併前のもの)で全国で検索すると、6件出てきます。
大頭竜神社 栃木県那須郡黒羽町川上240 大己貴命
大頭竜神社 静岡県榛原郡川根町笹間上710-3 大己貴命 菅原道眞 彌都波能賣命
大頭龍神社 静岡県小笠郡菊川町加茂947 大物主大神 大山咋大神 出雲竜神
熊野大頭竜神社 静岡県袋井市広岡571 伊弉諾尊 伊弉册尊 少彦之命
大頭龍神社 静岡県磐田郡浅羽町梅山128 素盞嗚命 於呂知之命
大頭竜神社 静岡県磐田郡福田町大原4017 素戔嗚尊
いずれも龍神そのものではなく、出雲系や日向系の神が主祭神なのが特徴ですが、そもそもは龍神を祀っていたのが、後年祭神の祀り替えがあったのかもしれません。東北地方の神社では、祭神の祀り替えは良くある現象です。
なお上記は、神社本庁に属している神社のみのリストです。
神社本庁に属さない単立の神社もあるので、上記以外にもあると思います。