温泉法はザル法

湧き出している(もしくは汲み出した)ものが、温泉なのかどうかは温泉法によって定義されるわけですが、この温泉法というのが、実はザル法であるということはあまり知られていません。
日本人は温泉好きなので、温泉法も古くからあるものと思いがちですが、温泉法が制定されたのは、日本における法律の歴史からするとごく最近の話です。
温泉法の冒頭に制定された年月日がありますが、
(昭和二十三年七月十日法律第百二十五号)
となっています。つまり制定されたのは、戦後のことであり、温泉の歴史が紀元前からあることを考えると、ごく最近のことです。
この温泉法が出来上がる過程において、それまで(本物の温泉かどうかはともかく)温泉として営業していた宿や湯屋が法律ができたことで、温泉と言えなくなるのは、既得権益の侵害になるということから、それまで一応温泉として営業をしてきた場所の湯は全て温泉として扱うということから、温泉法が出来上がっているため、法律において定義される温泉に効能があるのかどうかということはチェックされていないのが現実です。
温泉の定義は温泉法の別表にあるのですが、別表のいずれか一つでも該当すれば温泉になってしまうというのが現実です。
以下に別表を引用すると、
(定義)
第二条  この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。
別表
一 温度(温泉源から採取されるときの温度とする。)
摂氏二十五度以上
二 物質(左に掲げるもののうち、いづれか一)
物質名
含有量(一キログラム中)
(以下省略)
(太字は、筆者による)
上記の、一と二のいずれかに該当すれば、温泉と言う事なので、単なる温水(といっても、温水とは言い難い25度以上ですが)でも温泉になってしまいます。
単なる温水が温泉というと、温泉に抱いているイメージとは随分異なるものになりますね。
さらに、法律上では別表第二項だけでも良いので、第二項のいずれかの物質ひとつでも含有量を満たしていれば、温度が25度以下でも温泉になってなってしまうわけです。
つまり、我々がイメージしている温泉というものと、法律上の温泉では、相当な”かい離”があるということです。
こうなってしまっているのも、法律制定以前に、厳密なチェックもなく温泉とされていたものを、既得権益として取り込んでしまったからになります。
さらに、法律では湧いている(もしくは汲み出した)湯について定義されているだけで、湯船のお湯については、定義されていません。
そのため、湯船のお湯のうち大半が水道水を沸かしたもので、そのなかにほんの少し温泉を混ぜたものであっても、温泉ということになってしまいます。
こういったことは、加水といって酸性度が強くそのままでは入浴に適さない場合、加水することで入浴に適したものにすることはあり、加水そのものが悪いわけではないです。
問題なのは、ほとんどが水道水なのに、温泉と称されているような場所があるということです。
また、浴槽のお湯が循環式の場合、温泉の本来の力は落ちてしまうのですが、そういったことも法律上には定義がありません。
最近関東平野で、天然温泉という施設が増えてきていますが、これらの多くは2000mくらい地下深くボーリングしたもので、それくらいの深度になると、地熱の関係で地下水も温度が上がるため、法律上の温泉になってしまうわけです。しかしこれを天然温泉と呼ぶのはどうかと思います。温水といった方が、我々の実感に合っていますね。
こうして見ると、我々利用者にとって温泉法というのがいかにザル法であるかが分かると思います。


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