板橋の縁切り榎は、関東随一の縁切りのご利益で知られていますが、縁切り榎の神様が誰なのかは、ほとんど知られていません。
縁切り榎の神様
縁切り榎の正式名称は、榎大六天神。
言葉が繋がっているので、分けると「榎」+「大六天神」となります。
つまり、「大六天神」の御神木が「榎」ということになります。
で、「大六天神」とは?
縁切り榎の御祭神が、
面足尊(おもだる)
惶根尊(あやかしこね)
とされていることがありますが、これは後年無理やり当てはめただけです。
「天神」となっているので、天神様つまり学問の神様として知られる菅原道真公かというと、これは単なる勘違いです。
「大六天神」は、面足尊でもなければ菅原道真公でもありません。
縁切り榎では「大六天神」ですが、多くは「第六天」という呼ばれ方をします。
「第六天」という名前をほとんどの人は知らないと思いますが、明治以前の武蔵国(現在の東京+埼玉+神奈川の一部を合わせた地域)には、大小合わせて約300社あったと言われているので、かなり人気があったことが伺えます。
第六天については、こちらの書籍に詳しいです。
出版社:言視舎
発売日:2017/8/30
価 格:¥2,200
ISBN-10:4865651012
ISBN-13:978-4865651010
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第六天とは
第六天は、仏教に出自があり、第六天魔王あるいは単に魔王、他化自在天などとも呼ばれ、仏界の欲天のうち「第六天」に住む仏尊(ほとけさま)のことです。
この仏尊は人々の欲の喜びを自分の糧にします。仏教が広まってみんなが悟りを開くと欲心が無くなってしまい、第六天は困ってしまうので、魔王に変化し仏教に対抗するようになります。
仏教すなわち釈迦如来に対抗できる力を持った強力な魔王を祀ることで、自分の欲をかなえてもらえる。ということで、第六天は人気となります。
第六天が広まった理由については諸説あり複雑な説明もありますが、民衆レベルで広く人気が出るということは、分かりやすい説明で人気が出たと推測されるので、この説を取ります。 |
仏教に対抗するのであるから、第六天の魔王が神社の神として祀られたのだと思います。
このあたり、典型的な神仏習合の神様になりますね。
神仏分離の荒波
しかし、明治時代になると、神仏分離の時代となり、神社として神仏習合の神様を祀ることが出来なくなったため、適当な神様を見繕って神様の祀り替えをすることになります。
代表的なのは、神代七代のうちの六番目の神様である、面足尊・惶根尊の夫婦神への祀り替えですが、単に同じ数字の「六」を当てはめただけなので、何の繋がりもありません。
あるいは、「第六天=だいろくてん」を「だいこくてん=大黒天=大国主命」に読み替えてしまったところもあります。
こうして、多くの第六天はその姿を消して行ったわけですが、神仏分離の荒波を生き残ってそのまま第六天を祀っている神社もあります。
第六天を祀る神社
第六天を祀る神社は、武蔵国(現在の埼玉県・東京都・神奈川県の一部)を中心に残っているのが見られます。小さい石造りの社である場合もあるので、有名な神社もしくは宮司さんが常駐している神社を中心に調べています。
●縁切り榎
通称は「縁切り榎」ですが、正式な名称は、「榎大六天神」であり、神仏分離の荒波を生き残った数少ない神社になります。
こちらの、ご利益の縁切りは良く知られており、私もお勧めの神社です。
ここでは、容赦ない浄化のエネルギーで縁切りがなされるわけですが、神道系の神様にはあまり見られない容赦のなさは、魔王とも呼ばれる第六天ならではのエネルギーですね。
●魔王天神社
富士山の北側、道の駅なるさわの近くに、魔王天神社という神社があります。
魔王天神社
https://en-light.net/fuji#toc32
こちらも第六天を祀った神社です。
現在の祭神はフツヌシ(経津主命)となっていますが、元を辿ると、魔王=第六天となっており、村では魔王大六天(オダイローサマ)と呼んで親しんでいます。
上記のリンク先の記事を書いていた時ですが、アパートの天井が「バリバリっ」と音を立ててサインを送ってきた(コンクリートの建物なので普段は音がしません)ので、第六天が強力な魔王であることがよくわかります。
魔王天神社も、社名からすれば神仏分離の荒波を生き残った神社ですが、祭神が祀り替えされています。
●山倉大神
山倉大神は、大六天魔王の総本宮。
呼ばれて行って来た時の記事がこちら。
第六天を祀る神社 - 山倉大神(その1)
https://en-light.net/archives/47721
第六天を祀る神社 – 山倉大神(その2)
https://en-light.net/archives/48044
●武蔵第六天神社
埼玉県さいたま市岩槻区、元荒川のほとりに立つ神社です。
第六天の名前をそのまま残している神社で、古い地図を見ると当時の荒川(その後河川切替えによって、元荒川となる)のほとりに立つのは変わっていないようです。
ホームページを見ると、面足尊・吾屋惶根尊の二柱が主神となっていますが、「第六天魔王」についても簡単な記述があります。
ということで、行ってみました。
参拝してみると、普通の神社とは異なる独特のエネルギーです。
どちらかというと人に近いエネルギーであり、第六天とも通じる感じですが、もう一方で魔王の使いとしての天狗を祀っていることもあり、そちらの方が大きいかもしれません。
●そのほかの第六天神社
他にも社名が第六天神社となっている社は色々とありますが、規模のある神社の場合ほとんどは面足尊・吾屋惶根尊の二柱や他の日本書紀・古事記の神に祀り替えされているようです。
●縁切り榎は特別
こうしてみると、縁切り榎は、第六天よりも御神木の榎の方に注目があったのと、小社であったため、神仏分離の荒波も乗り越えて、昔からの祀り神がそのまま残っている希少な神社になります。
ここまで見てると、第六天の願望実現化力はかなり高いみたいなので、第六天がそのまま祀られている神社については、引き続き探して行きます。
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