iPhoneと老舗の関係

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iOS6においては、Appleという企業のポリシーが大きく変化したことがわかります。

これまでは、「ユーザーの期待を裏切らない」「ユーザーの期待以上のものを提供する」というのがポリシー(あるいは戦略)でした。しかし、iOS6を見ると、「企業としての戦略を優先する」という方向に舵を切ったことが見て取れます。

これは、どういうことかというと、「製品を通じたユーザー体験」よりも「企業としての都合」を優先するということです。これは、かつてアップルをジョブズが追われた後のマッキントッシュ(Macintosh)に見られた傾向とよく似ています。

ジョブズが追われた後のマッキントッシュは、段々と普通のコンピューター化して行き、やがてピザボックスと呼ばれる単なる白い箱のコンピューターになっていき、ユーザーの期待以上の製品を提供できなくなっていきました。

短期的には、コストダウンという正しい戦略かもしれませんが、長期的にはWindowsではなくマッキントッシュでなければならないという、選択の理由が無くなって行き、市場シェアも低下する一方になります。

そんな状況に陥ったアップルにジョブズが復帰して、新しい価値観を世に問うたのが、iMacでした。iMacは、それまでのパソコンとは違い、そのコンピューターを欲しいと思う理由が沢山詰まったパソコンでした。

iPhoneは、iMacと同じように、それが欲しいと思える製品でした、その魅力は今も変わりませんが、iPhone5では、それが欲しいと思える大きな理由のひとつを損なってしまいました。これは、ジョブズであれば絶対的に行ってはならないことであるのに、今回のリリースではそれを行ってしまいました。

これは、アップルという企業が、普通の企業になってしまうのか、それとも特別の企業であり続けるのかの分かれ道になります。

願わくば、これまでどおり、「ユーザーの期待を裏切らない」「ユーザーの期待以上のものを提供する」する企業であって欲しいと思いますが、iPhone4からiPhone5への流れを見ると、普通の企業への道を歩んでいるように思えます。

この話を、コンピュータ業界から、昔からある老舗に置き換えてみるとわかりやすくなります。老舗というのは、「お客の期待を裏切らない」「お客の期待以上のものを提供する」という点では、まったく同じです。それを長年弛まず続けているから、私たちは安心してその店の商品を買うことができ、それゆえに老舗と呼ばれるわけです。

そんな、老舗がお客様より自社の都合を優先したらどうなるか、そういったお店はいずれ老舗の評判を落として、継続できなくなって潰れてしまいます。

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