内閣支持率のマジック

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発足時の内閣支持率が、60~70%くらいあるという話を前の記事で書いていますが、この数字の読み方には注意が必要です。

ここには、統計のマジックがあります。

内閣支持率が、60~70%と聞くと、過半数の国民が支持しているかのような錯覚がありますが、調査対象全員を計算してみると、実際には過半数には達していません。

無作為抽出の世論調査の場合、回答率が6割くらいになるのが通常です。こちらのページが参考になります。

NHK放送文化研究所 > 世論調査 > 政治意識月例調査(2009年)
http://www.nhk.or.jp/bunken/yoron/political/2009.html

上記を見ると、鳩山内閣発足時(9月(緊))は、内閣支持率は72%になります。

ただし、ページの下の方を良く見てみると、「調査概要」というところに、回答率があります。関心が高い時でも、65%くらいですし、概ね6割で推移しています。

つまり「残りの4割からは回答を得ていない」ということですから、

調査全体のうち、明確に内閣支持を回答した人の割合 = 回答率 × 支持率 = 72% × 61% = 43%

になります。つまり、「7割の人が明確に支持しているわけではない」、ということです。

報道機関は、回答がなかった人について推測で記事を書くわけにはいかないので、回答があった事実のみを取り上げることになり、内閣支持率が60~70%くらいあるという報道になってしまいます。

こういった調査報道において、回答率をきちんと表記しないことが多いのですが(特にTVニュース)、これだと、視ている人に誤った印象を与えてしまうことになります。

また、こういう調査では質問項目が1つということはなく、複数の質問を聞くことになるので、質問の文言や聞く順番で回答者の答えはかなり左右されます。この質問を作成するのは、報道機関側になりますが、報道機関がどの政党寄りになっているのかによって、恣意的な質問の組み立てになるのは知られており、報道機関の姿勢によって数値がかなり変わることになります。

(参考)

(1)電話による調査(RDD法:Random Digit Dialing)については、こちらの論文が参考になります。

サーベイメソドロジー研究会(HP
第87回行動計量学会シンポジウム
「いま求められる調査とは-各調査モードの比較検証-」
電話(RDD)調査の課題 佐藤寧
http://surveymethodology.web.fc2.com/docs/bsj061111_sato.pdf

(2)電話による調査の質問項目は、こちらのページが参考になります。

日経電話世論調査 2012年調査結果一覧
日経リサーチ(市場調査・企業調査・世論調査)
http://www.nikkei-r.co.jp/service/phone/results/2012/

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