東北の方角を「鬼門」として、忌み嫌う風習が日本にはありますが、鬼門という考え方は日本にしかありません。元は風水から来ているとも言われていますが、本来の風水には鬼門という言葉も概念もありません。
要するに、鬼門というのは日本人の頭の中にだけ存在する、空想上のストーリーでしかないということです。
風水に関する大学の歴史研究者が書いた本などを読んでいた時に、「東北~西南に並ぶと相互に影響されやすい」と短く書かれた文があり、これが鬼門という考え方に繋がっていったのではないかと考えています。
テキストで書くので、横にならびますが、実際には45度の角度になります。
(西南) 建物A - 建物C - 建物Z (東北)
といった形で、三つの建物が並ぶと、建物Cは、建物Aと建物Zからの影響を受けることになります。この場合、影響というのは良い場合もあれば悪い場合もあり、鬼門のようなネガティブ一辺倒といったものではありません。
つまり、建物Aと建物Zが、エネルギー的にも物質的にも良いものであれば、建物Cは良い影響を受けることになり、ひいては建物Cの中にいる人にも良い影響があります。
江戸の町づくりでは、
(西南) 増上寺 - 江戸城 - 寛永寺 (東北)
と、両脇を高僧と良い寺院にすることで、江戸城に良い影響を与えようとしたものです。
逆に、建物Aと建物Zが、エネルギー的にレベルの低い人たち、粗末な建物であれば、それに挟まれた江戸城とそこにいる人たちにも悪い影響を与えることになります。
この「東北~西南に並ぶと相互に影響されやすい」というのは、良い影響も悪い影響もどちらにも同じことなので、東北~西南に良い建物・良い人達がある場所を選ぶ、あるいは建物Aと建物Zが、ニュートラルなのであればポジティブに考えることが重要になります。
ここでは建物という大きなものを例に取って説明していますが、土地の中にある木や井戸などについても、同じような事が言えますが、規模と影響度合いは比例する傾向が高いので、木や井戸などの場合は、それほど大きな影響を持っているわけではありません。
風水というのは、本来都市計画のために編み出された手法であって、土地や建物の内側のことは除外されています。それをあたかも、土地や建物の内側のこととして適用するのは、適切とは言えないと思います。
しかし、鬼門という頭の中の空想上のストーリーも、思い込みが強くなると、それが現実化する(引き寄せる)ということが起きるため、それが間違いのない事実であるという信念に発展することになります。
小説や漫画の中であれば、ネタとして面白いかと思いますが、本来の風水とは異なる適用であるということを知っておくのは大切です。
(おすすめ書籍)
書名:風水講義
著者:三浦 國雄
現職:大東文化大学教授(専門:中国思想史、道教史、東アジア比較文化論、沖縄学)
http://www.amazon.co.jp/dp/4166604880
本来の風水を理解するならこの本です。風水はそもそも、住む場所はどこが良いか、ひいては首都をどこに置くのが良いのかを決めるための都市計画技術なのです。
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