江戸時代末期に作成された「武蔵國全圖」(武蔵国全図)の神社一覧に掲載されている神社が現在ではどの神社になるのかを調べています。
武蔵国全図の神社一覧に掲載されるということは、当時において「霊験あらたかな神社」、今風に言えば「御利益がある神社」ということで、人気のある神社なのだと思います。
そこで、一覧を見てみると、
久伊豆明神 久伊豆二在 同三十石(社名 地名 社領石高)
という表記がされています。(赤囲みは筆者が追加)
久伊豆神社(久伊豆明神は古い呼び名)は、久伊豆にある(久伊豆二在)ということで、久伊豆という地名を現在の地名、古い地名で探してみたのですが、この地名は見つかりません。
しかも、神社本庁のデータベースによると、久伊豆という名称を持つ神社は、埼玉県に56か所(摂社、末社を除く)存在するので、どこの神社を指しているのかが分りません。
そこで、現在代表的とされる久伊豆神社を調べると、岩槻と越谷の二社が出てきます。
実際に参拝して見ないと何とも言えないので、行ってきました。
●岩槻 久伊豆神社
入口正面から、本殿方向へまっすぐ参道が続きます。
入口正面から、本殿とは反対方向を見ると、奥の交差点まで参道が続きます。
踏切は東武鉄道野田線(東武アーバンパークライン)。
境内と境外を合わせると、約700mもある長い参道が印象的です。
拝殿は平成の大造営で真新しくなり、無垢の木がとても綺麗でシンプルな造形です。
本殿は、昔の姿のままで、江戸時代に流行した彫り物が沢山あるスタイル。
すがすがしく、木のエネルギーが印象的な神社です。
参拝した後、しばらく散策していました。
そして、越谷に移動します。
●越谷 久伊豆神社
正面入り口から。
外壁がお寺風の作りなので、ちょっとびっくりしました。これは、かつての神仏習合の頃の雰囲気をそのまま残しています。また、お祭りがあるので屋台が参道脇に出ています。
正面から本殿に向けて、まっすな参道が続きます。
正面から、反対方向。
仲の良いご夫婦が歩いているので、ちょっと分りにくいですが、元荒川までまっすぐ参道が続きます。
境内と境外を合わせると、約460mとこちらも長い参道が印象的です。
拝殿は、いわゆる権現造の大きな社です。
そして、本殿は飾り金具も多く付き、彫り物も多い大きな社です。
境内には、池や噴水、かつての自噴湧水の霊水(現在はポンプで汲み上げ)などがあり、また手水舎には龍神の彫り物や絵図もあるなど、水のエネルギーが印象的な神社です。
●武蔵国全図の久伊豆神社はどれか?
武蔵国全図の地図を詳しく見て行くと、岩槻と越谷に「クイツ/久イツ=久伊豆」という神社表記があり、当時もこの二社が代表的な久伊豆神社であるということが判ります。(赤囲みは筆者が追加)
今回参拝した岩槻と越谷以外にも沢山の久伊豆神社がありますが、参拝してみると代表的なこの二社でもどちらが良いかということは、甲乙つけがたいものがあります。
恐らく、武蔵国全図の作者は、岩槻と越谷のどちらが良いのか結論を出すことが出来ない。
※神社の格付けにおいて、複数の神社で論争になって決着が付かないことは良くあることです。
そのため地名を、久伊豆二在(久伊豆にある)として、どちらとも取れる折衷案にしまったのではないかと思います。
●公式ページ
久伊豆神社 埼玉県さいたま市岩槻区宮町2-6-55
https://www.hisaizu.jp/
久伊豆神社 埼玉県越谷市越ヶ谷1700
http://www.hisaizujinja.jp/
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