神社本庁が出している資料に「平成祭データ CD-ROM」(神社本庁で領布2万円)というものがあります。
全国の神社(ただし、神社本庁に属している神社のみで、属していない神社は掲載されていない)のデータを調べるには格好のデータベースです。
ただし、CD-ROMはMS-DOS時代に企画されたものなので、付属している検索プログラムはMS-DOS対応で、Windows対応ではありません。
この貴重なデータを生かそうということで、Windows対応の検索プログラムを玄松子(げんしょうし)さんが開発して、フリーソフトとして公開( http://www.genbu.net/ )しているので、これを利用させてもらいました。
日本の主祭神と言えば、天照大御神(あまてらす)というのが一般常識となっていますが、出雲の歴史を調べていくと、素盞鳴(すさのお)が日本の国の主要な地域を統治していたのではないかということに気が付きます。
そこで、現時点での全国の神社の主祭神がどうなっているのかを調べてみました。「平成祭データ CD-ROM」は現在の神社の本社・末社の主祭神、配神、合祀などを検索できますが、今回は全体の傾向を見るということで、本社に祀られている神を主・配・合祀も含めた数でカウントしています。
伊勢神宮設立以来、日本の神様は天照大御神ということになっているので、当然天照大御神を祭った神社の方が多くなると思われるのですが、その結果は意外なことになります。
合計ではアマテラスが11692社に対して、スサノオは9315社ということで、アマテラスが多いのですが、圧倒的に多いという訳ではありません。
さらに地域別で見てみると、アマテラスは東日本地区で強く、東北開拓が進んだ頃にはアマテラスが主祭神として扱われていたことが伺われます。ただ、関東地区ではスサノオが多く、武蔵國の開発には、出雲地区からの移民が多く携わったということが文献上にも見られるのですが、数の上からも伺えます。
注目すべきポイントその2は、伊勢すなわち三重県でのスサノオの神社の数です。伊勢といえば、アマテラスを祭る伊勢神宮がある土地ですから、当然アマテラスを祭る神社の方が多いと思われがちですが、結果は逆になっています。つまり、この地域もアマテラスを祭る神社である伊勢神宮ができる以前にスサノオが多く祀られていたと考えるほうが自然です。
さらに注目すべきポイントその3は、琵琶湖から西の地域でのスサノオを祭る地域の多さです。
大和國と言われる地域である近畿地方において、アマテラスの神社よりもスサノオの神社が多く見受けられます。
歴史的にも、スサノオとアマテラスでは、スサノオ系の人たちが古くから近畿すなわち大和の土地を治めていたと言われており、アマテラス系の人たちが近畿を治めたのは後年になります。そして、全国の都道府県別に見るなら、スサノオの方が多くなります。
日本書記・古事記が書かれた頃にはアマテラス系の人々が大和の地を治める時代になっており、それ以後はアマテラスを祀る神社が多く立てられたと推測されます。にもかかわらず、これだけスサノオを祀る神社が多いということは、日本書記・古事記に書かれた歴史とは異なり、日本はかつてスサノオすなわち出雲の人たちが日本という国を作り上げて行ったのではないかと考えられます。
コメント
いつもありがとうございます。
「東日本大震災の津波被害における神社の祭神とその空間的配置に関する研究」
というのが発表され話題になっています。
(現在アクセスが集中してつながりません。)
スサノオを祀った神社、また、スサノオがルーツと考えられる熊野神社は、
そのほとんどが津波被害を免れており、次に被害が少なかったのは八幡系神社、
津波被害が大きかったのは稲荷系神社、一番被害が大きかったのはアマテラス系神社
だそうです。
> 河野さん
「東日本大震災の津波被害における神社の祭神とその空間的配置に関する研究」ですが、捜してみると、こちらにあるようです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejsp/68/2/68_I_167/_pdf
読んでみましたが、なかなか興味深い研究ですね。